2004年11月16日

書籍『人はなぜ「美しい」がわかるのか』

 このタイトルを見てすぐさま「おおっ?!」と思い手に取り、ぱらぱらとめくってみたところ──

「美しい」とは、「合理的な出来上がり方をしているものを見たり聴いたりした時に生まれる感動」です。


──このような一文を発見し嬉しくなりました。私の考えと似ています。これは私の本だ。読むべきだ。即座にレジへ持っていきました。

   *

 で、先ほど読み終わったのですけれど。この本、オビには──

最もシンプルな哲学書!
「美しい」は「合理的」や「カッコいい」とはどう違うのか?
日本人の真・善・美を包括的に問いなおす!


──などとセンセーショナルに書かれてあるけれども。シンプルな、ストイックな本ではありませんでした。余計な枝葉と私語が多い雑然とした印象でした。哲学書というより、社会分析とエッセイとが混じった感じ。『こういうことがいいたいんだろう──』と思って読んでいるととつぜん話が飛ぶ。『いったい何が言いたいんだ? どこへ落ち着くんだこの話は──』と思って読んでいると、落ちない終わり方をする。期待して、意味を求めて読んではだめです。『なすがまま、なされるがまま』に読まないとつらい本でした(決して文や構成がいびつだったわけではないのですが、話があっちこっちに飛ぶので戸惑ったのです。先入観を持って読むと波長が合いません)。

 内容は、おおざっぱにはこんな感じです──

・「美しい=合理的」たとえば黄金分割
・じゃあ「夕焼けの美しさ=夕焼けの合理性」ってなんだ
・美しいものは美しい!
・美しさを認めたがらない人
・美しさと敗北感、美しさと孤独
・美しいものは美しい!

──「美しいとは何か?」「美しさを感じるのはどういう時か?」「美しさを感じる人と感じない人がいるのは何故か?」といったことを考えつつ、最後は「美しいものは美しい!」で決着する(笑)。なんとも快活な論で、個人的には好きなのですが、納得いかない人も多そうだなあ(笑)。

 論考に、作者自身の視点や記憶が多く混ざっている本です。「5歳のときに見たユリの芽の美しさ」が語られたかと思えば「一本グソの美しさ」が語られもします。ごちゃごちゃっとした本です。『これを読めば美しさの原理がわかる!』という本ではないです。むしろ『いっしょにわからなくなりましょう』といった感じでした。期待していたものとは違いましたが、妙に読み進んでしまいました。

   ◆

書名:人はなぜ「美しい」がわかるのか
著者:橋本治(はしもとおさむ)
発行:株式会社筑摩書房(ちくま新書)
2002年12月20日第1刷
2004年4月10日第4刷
ISBN4-480-05977-6 C0270(本体760円+税)
posted by 若原光彦 at 23:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍
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