2005年02月15日

帰ってきました。(大阪滞在記)

 大阪に『鉄腕ポエム6』観戦に行ってきました。帰ってきたとたんに書くものだらけ・読むものだらけでわたわたしています。出かける前からわかっていたのですけれどもね。

 大阪では、11日(金)に時間があったので映画『パッチギ』を見ました。12日(土)も時間があったので日本橋の電気街を歩きました。13日(日)は水尾さん由井さんタジカさんと動物園に入りました。
 自分で宿は取っていたのですが、流れ流れて門限を過ぎ、ひとさまの家や宿に入り込んで2泊しました。感謝です。

 ……つらつらかくと長くなってしまいそうなので箇条書きにしてみます。

   *

11日(金)

・JRで「大垣→米原→新大阪」へ、地下鉄で「新大阪」へ。電車の車内で『バディ・ボールデンを覚えているか』を読了。
・宿『ビジネスホテル中央』にチェックイン。昨晩に電話した時の対応もよかったけれど、実際にも良い感じだった。ロビーには自由使用できるノートパソコンがあった。
・室内を確かめてから、荷物(リュック1つ)を全部持ってホテルを外出。フェスティバルゲートへ。
・上階の映画館で『パッチギ』を観賞。うしろの方で見よう、と後方の鉄のバーにもたれていたら、係員さんがパイプ椅子を持ってきてくれた。祝日だったこともあり、大入りだった。
・映画が終わってからは、映画館の喫煙所でボーっと数本煙草を吸った。
・フェスティバルゲート内の店をいくつか見てから『cocoroom』に入った。コーヒーを頼んで水尾さんレモンさんレイさんと雑談。
稀月真皓(きづきみひろ)さんが受付を始められたので、チケット購入、オープンマイクにエントリー。ドリンクチケットでウーロン茶を貰い、後方に着席。椿さん、河野宏子さん
・ほどなくしてオープンマイクがスタート。竜善さんという60歳ぐらいの激しい男性がいた。即興で語るひともいた。朗読が初めてというひともいた。自分は『不死者達へ』を読んだ。読み終わって席に戻る時「よかったよ」と男性に言われた。ありがとう。
・オープンマイクの時間が余ったので3人ほどその場で追加エントリー。後で気づいたことだが、これは遅刻者を待つためでもあったらしい。
・『鉄腕ポエム6』スタート。司会は稀月真皓さん。主催の近藤洋一さんが病欠とのこと等を説明。休憩を挟みつつ、約3時間の詩のライブ。亜子米さんはギタレレという楽器を演奏しはった。草原が見えるような歌だった。橘安純さんの自由律俳句は超シリアスで言葉がなかった。「さむくてもここで寝る」という句には絶句した。
・余談だが、今回私は拍手の量と長さを意識的にした。いいと思った人には率先して大きく長く。そうでないと思った人には普通に(煙草やドリンクで手がふさがっていたら拍手しない場合も)。私が「すごい!」と興奮させられた人は、お客さんみんなからも良い拍手が聞こえていた。
・choriさん、ジュテーム北村さんは、関東の詩人名やスポット名を登場させたリーディングをしはった。私はちょっと引いてしまった。
・桑原滝弥さんは(なんだか知らないが)「にゃんにゃん」と言い、お客さんにもそれを言わせようとしていた。リーディングよかった。にゃんにゃん。
・楠木菊花さんは、ミニの赤い浴衣を着てキツネのお面を持って歌いながら登場。「お前らはどうなんだよ! 私はこうなんだよ!」といったシャウトを見せた。名古屋でも同じような芸風ではあったけれど、よりハクが増し姿勢も声も内容もビシッとしていた。迫力だった。
・閉会後は、水尾さんに誘われ辻本真孝(つじもとまさのり)さんのお宅にお邪魔した。そらみみさん、水尾さんの娘さんとその旦那さんとその娘さん、日替わりバーのマスターさん、黒ねこ白ねこが居た。怪獣についてなど雑談で夜は更け、眠くなったのかうつらうつらしているとソファーベッドをすすめて下さった。ご無礼して、仮眠させて頂いた。

   *

12日(土)

・ぼんやり目がさめた。そらみみさんと水尾さんがリーディングについて話していた。要約すると、そらみみさんは「アナウンサーなどの朗読のほうが聞いていてイメージが浮かぶ」「自分の詩を読む人よりも、演出家やプロデューサーがライブには必要だと思う」といった考えでリーディングには距離感を感じているらしかった。「作風でならグループを作りたい」ともおっしゃった。鋭い、と思った。リーディングに出慣れてくると失われていってしまう考えを持ち続けているみたいだった。私も起きて入り、話は「詩は特別な表現か」といった内容になり、いつのまにか「宝くじが当たったらどうするか」という話になっていた。
・朝6時、お礼を述べ、辻本さん宅を出て地下鉄に乗り、ホテルに向かった。煙草を吸い、観光マップを取り出して今日の予定を考えた。とりあえず11時まで寝た。
・のつもりが、13時半まで寝てしまっていた。今日14時から「上田假奈代さんがフェスティバルゲート近辺(地名で言うと「西成」や「釜ヶ崎」らしい)を案内してくれる会」があったのだが、まにあいそうにないので諦める。観光マップを見ながら煙草を数本。ぽつねん。
・悩んだが、近いし徒歩で行けるので日本橋の電気街に行ってみた。PC家電店とCD・DVDの販売店とフィギュア・模型の店が延々1キロぐらい立ち並んでいた。とにかく人間だらけだった。欲望そのものといった店、店、店、店店店店。なんだか急に日本が嫌になった。
・中古ビデオが図書館みたいにぎっしり陳列されている店があった。好きな(マイナーな)映画の巻を探そうと思ったが、完全にデタラメに並べてあるだけだったのでとても探せそうになかった。あまりに未整理で正直な店だった。お客さんは多かった。
・疲れたのでフェスティバルゲートに戻った。ちょうど時間だったので『鉄腕ポエム6』チケット購入。オープンマイクにはエントリーしなかった。時間が余って追加募集があれば参加しようと思った。コーヒーを持って席に着いた。
・席で藤坂萌子さんにお会いした。可愛らしいお声だった。鳥取砂丘でお会いした男性にもお会いした。ああ、名前が思い出せない……ごめんなさい。水尾さん、由井瑞恵さん、由井さんのご学友タヂカさんもいらした。
・他人のオープンマイク出演を見ていたら、むらむらと自分も読みたくなったが時間はジャストで、追加はなかった。昨日も出たし遠慮したのだけれど、名古屋の宣伝もかねて出ておくべきだったのかもしれないなあ。晩のそらみみさんの話などを受けて、アナウンサー的な読み方で『ビヨンド』とかやってみようかと思っていた。
・水尾さんの『きつねずし』はいつになく良かった。会場が氷っていた(良い意味で)。
・昨日は即興で近況を話していた女性が、今日はギターを弾いて歌を歌った。うまかったが、持ち時間5分をオーバーして途中で止められた。
・昨日が初リーディングだった男性もエントリーしていた。17歳であることが判明しちょっと驚いた。竜善さんは威勢よく「鉄腕って何だ! 同じ人間だろう!」と檄を飛ばす即興を行った。面白いというのではないけれど、ドキドキした。
・鈴川夕伽莉さんは詩集より表題作『ミドリンガル』を朗読。テキストで読んだときは難しい印象があったのだけれど、リーディングでは物語として気構えせず聞けた。苦しげな内容だったけれど、面白かった。
・オープンマイクが終了し『鉄腕ポエム6』開演。前半の司会は楠木菊花さん、後半の司会は桑原滝弥さん。菊花さんが言おうとしたことを桑原さんが言ってしまい、怒られてた。
・横山千秋さんは、マイクから少し離れてうつむきがちに朗読されていた。目がとてもきれいな方だった。テープレコーダーを利用してのちょっとアートっぽい面もあるパフォーマンスだった。
・ジュテーム北村さんは、昨日は引いてしまったが今日はしっとりと聞くことができた。
・西野智明さんのリーディングは「ティファールのなべを買ってきたことから喧嘩になる夫婦」の話。丸っこい声がユーモラスで幸せな感じだった。桑原さんが「この人は別に落語家さんじゃないぞ」と紹介したが、たしかに噺家さんみたいに見えた瞬間があった。内容もなかなか哲学的で、文面で読んだらもっと理知的に感じただろうと思う。いいリーディングだった。よいものを聞いた。
・小笠原淳さんはギター演奏者を連れてのパフォーマンス。昨年ブッキングさせていただいた時に一度聞かせていただいているのだけれど、やっぱり凄かった。リーディングとしてはかなり崩したものである筈なのに、目が離せないというか引っぱりこまれるというか、無理なくイメージが浮かんだ。怒涛なのだけれど、優しい土の匂いがする。好きだ。
・藤坂萌子さん、稀月真皓さんの朗読はきれいだった。入り込めないところもあったけれど、それは単に私の好みだったのかもしれない。稀月さんはお題を客席から貰っての即興詩を披露した。たしか「マカロニ」「太平洋」とあともうひとつ。「マカロニには穴が開いていて芯が通ってない」と聞いて私は「穴に芯が通るじゃないか」と思ったがそういう問題ではない。即興詩は、お題を早めに消化して、後半は苦言めいたところをかすっていった。苦手に感じた。
・レモンさんは『なんぼですのん』というアレ(笑)や即興のスポークンワーズを披露した。よかった。隙がないビシビシの良さではなくて、隙だらけでカッコいい良さ。「近藤さん! 近藤さん頼みますよ!」には笑った。新選組ね(笑)。
・馬野幹(まのみき)さんのリーディングは始めて拝見した。ホワッとした声で、リズムはやや崩したものだった。サイトでテキストを読でいて桑原さんのようなストイックなリーディングを想像していたのでちょっと驚いた。ほんわかした印象と、ハードなことを考えていそうな深さと。人柄だった。
・閉会後は、cocoroomのカウンターのほうでビールを一杯飲んだ。稀月真皓さんから名刺を頂いた。「名刺を渡すときはかならず裏に即興で詩を書かせて頂いている」とのことで、私は「ラグビーボール」という題をお出しした。「レモンみたいな形」「まっすぐ飛ばすのも難しい」「素直じゃない」「君みたいだ」といった詩が渡された。うまい、すごい、と思った。先ほどの即興は苦手だったけれど、即座にお題の特徴を捉えて構成して出せる「こなれた感じ」には敬服した。雑談するに、数年前からオープンマイクの司会者をやっているが、まだ20代だという。
・昨年5月にも寄った、たこ焼き屋さんにみんなで行った。歩いている途中で某さんが「岐阜県って琵琶湖があるところ?」とおっしゃったので悶絶した。琵琶湖は滋賀県です。
・たこ焼き屋さんの座敷に13人は入らない、ということで東京勢と喫煙者が座敷に入った。なぜか自分も入ってしまった。稀月さんが、オープンマイクの主催者になった経緯や考えていること、スラムを開始したいきさつなどを話された。西野さんのツッコミは知的にもボケにも冴えていた(つくづく面白い人です、文学にも詳しいみたい)。たこ焼きはおいしかった、ポン酢味とか、変わったのがあった。あの店はおすすめ。
・3畳ほどのスペースに10人が入っていたので、なんだか秘密結社のアジトみたいだと誰かが行った。間接照明で薄暗かったせいもある。
・桑原さんがジュテームさんに何度か「そうじゃねえんだよ」と返されていた。ジュテームさんはカッコいいが、緊張した。
・上田假奈代さんの運営の話もためになった。西野さんが「組織化しないと一人がみんな背負っちゃう」といったコメントを所々でしていたが、それは名古屋にも言えることかもしれないと思った。とにかく、場の話すべてを自分のこれからの事として聞いていた。
・さんざっぱら話して(というか私は話を聞いてただけだけど)水尾さんとお先に失礼した(その時にグラスを倒して幹さんの裾を汚して慌てた。頭が上がらない)。
・水尾さんはたまたまツインの部屋を取っていたので、そこに入らせてもらった。今日はどうだったとかそんな話を1時間以上してから、眠った。

   *

13日(日)

・5時半ごろ目がさめた。2時間ほどしか寝ていないことになるが、寝なおせそうになかったのでリュックから本やカメラを出して時間をつぶした。水尾さんの寝相を激写しようかとチラと思ったが、さすがにそれはしなかった。非常口から朝日を撮った。綺麗だった。
・昨日、電気街へ行く途中に、通天閣そばのタバコ屋でいろいろ珍しい煙草を買っていた。青りんごのメントール『DJ Mix』、『DEATH』、パイプ煙草がオリジナルらしいチェリーフレーバーの『BlackStone』、安価な両切り煙草『SHINSEI』。『DEATH』を取り出して、エレベーターの前の灰皿で吸った。あんまり「死!」っていうような味はしなかった。
・思い立ち、自分のホテル『ビジネスホテル中央』にいってチェックアウトをしてきた。ら、特にお金が返ってくるというようなこともなかった。わざわざ歩かなくても電話一本で済む話だった。あらら。
・朝の天王寺公園周辺は、閑散としていた。JR天王寺駅の方、公園入口のところでは観光バスが停まっていて幾人もがそれに乗り込んでいた。自分が厳しい目つきで早足になっているのが、自分でわかった。
・水尾さんのホテルに帰ると、エレベーターを降りたところで由井さんタヂカさんとばったり合った。朝食に行くところらしい。水尾さんを電話で呼び出して、四人で1階の喫茶店へ。食事とコーヒーをとりながら、詩についてなど話した。
・10時になってチェックアウト。4人で公園の動物園に入ってみた。カメラを持っていると「動物を見にきたのか写真を撮りにきたのか」というような状況になってしまって焦った。シャッターチャンスが目の前にウヨウヨしてるけど、カメラを振り回すのも浅ましい気もして迷った。動物園はとても面白かった。シマウマが(短足だったけど)綺麗だった。虎がド迫力だった。「こりゃ追われたら逃げられんなァ」とか馬鹿みたいな感想をもった。ヤギと羊がなぜか鉄柵を噛んでいた。フラミンゴは首がぐねぐねしていた(フラミンゴの後ずさりを初めて見た。鳥足逆間接がポキッといきそうで心配した)。ライオンは寝てた。キリンは舌が紫だった。カバはてっぷりしてた。サイはどっしりしてた。って何だこの小学生みたいな感想は(笑)。
・3分の1ほどだけ見て回って、退園。通天閣に寄り、たこ焼きを食べ、天王寺の地下街で喫茶店に入り雑談した。いままでになくディープに詩について語った。由井さんの考えや好みや方向はとてもしっかりしていた。ところどころ言語化できない部分があったのがお互いにもどかしかった。水尾さん由井さんの話を聞きながら「みんなそれぞれ洗礼を受けてきていて、それが好みや作風に影響を与えているんだな」「自分は多くのものを無視しているな」などと多くのことに気付いた。お三方にはご迷惑だったかもしれないけど、有意義だった。
・自分は地下鉄で移動しようと思い、JR天王寺駅で3人とお別れした。地下街の出口で男性から『BIG ISSUE JAPAN』を購入した。ありがとうありがとうとお礼を言われた。感謝されるために買ったわけではなかったので、良くも悪くも、むずがゆい気持ちがした。
・地下鉄で大阪まで移動。売店で『CHERRY』を買って(売ってたのだ)、米原行きへ乗車。車内ではずーっとウトウト眠っていた。米原のホームで立ち食いのうどんを食べ、大垣行きに乗り換えて、帰った。すっかり日も暮れ、外は冷たい雨が降っていた。コタツで本を読んでいたら自動的に眠ってしまった。

  *

 といった三日間でした。

 動物園にはまた行こうと思います。生で見るとやっぱり違うもんですね、見入ってしまう。動物と目が合ってしまったり。ハマりますね、馬鹿にできない。

 ……。たくさんためになる話が聞けました。行ってよかったと思います。ライブが見れるだけ、大阪をうろつくだけの三日間になるだろうと思っていましたが違いました。面識にしろヒントにしろ「未来に続くもの」が得られたました。
 さて、今年じゅうに東京にも行かんといかんね。いや、シャレではなく。稀月真皓さんの『Ben's Cafe』でのオープンマイクは『詩のあるからだ』にとってとても参考になりそうです。

 水尾さん、辻本さん、そらみみさん、お宿ありがとうございました。おかげで良い滞在になりました。
posted by 若原光彦 at 10:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 近況
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