2005年02月23日

最近読んだ本(『現代日本詩集』ほか)

 タイトル通りです。みっちり書く気力がないので、羅列だけにしておきます。

   ◆

『バディ・ホールデンを覚えているか』
作者:マイケル・オンダーチェ
訳者:畑中佳樹
出版:新潮社

*図書館で借りた。

*録音技術の発達黎明期に登場し、発狂し忘れ去られたジャズプレイヤーの異伝。作者の創作によるフィクション的要素を多く含むが、話を面白くするためというより格人物への同情によってのものらしい。散文だがとつぜん詩文になったりもする。パレードで発狂するシーンは胸を打つ。

   ◆

『吟遊詩人マルカブリュの恋』
原題:A TROIBADOUR'S TESTAMENT
著者:ジェイムズ・カウアン
訳者:小笠原豊樹
出版:草思社

*図書館で借りた。

*邦題が死ぬほどダサい。そんなことはどうでもいい。私には書名に詩という語が出ていたり、物語に詩や詩人が登場しているとついそれに手が伸びてしまう悪い癖がある。自意識過剰なのだろう。そんなことはどうでもいい。12世紀フランスの吟遊詩人マルカブリュにまつわる物語。彼の資料が急に発見され、彼を慕う著者は彼の道のりを辿りながら資料の検証を進める。フィクション性が高い物語なのでロマンチックな必然的偶然が多い。著者は詩集を2冊上梓している人物。言葉・詩・歴史に対する配慮は深い。でなければこの結末は書けない。

   ◆

『広部英一詩集』
著者:広部英一
出版:思潮社
レーベル:現代詩文庫160

*図書館で借りた。

*非常に良かったので、名古屋のジュンク堂にて自分で購入した。作風や温度感があまりに一貫していて驚いた。イメージを羅列すると、飛翔、透明、魂、青空、風、など。どのページをひらいても涼しくきらきらした息が流れ込んでくる。平易な言葉で読みやすいし、落ちも常に美しい。みんな読め。世の中には恐ろしい人がいるものだな。

   ◆

『詩とことば』
著者:荒川洋治
出版:岩波書店
レーベル:ことばのために

*図書館で借りた。

*詩論と詩の歴史論とが混じった一冊。『現代詩作マニュアル』に匹敵するほど入門として素晴らしい。冒頭「詩の分かち書きはなぜ一般受けしないか」の解説から入るので、実作者は頭をトンカチで割られたような感じがすることだろう。朗読やインターネット、新体詩などにも軽く触れている。

*書店で注文した。これは手元に持っておきたい。届いたらまた改まって紹介したい。

   ◆

『ムーン・パレス』
原題:MOON PALACE
訳者:柴田元幸
出版:新潮社
レーベル:新潮文庫

*大阪の古本屋で買った本。

*21日朝、なぜか傷ついて名古屋から帰ってきた。その電車内から読み始め、ふと『発狂したい』という詩を思いついた。帰宅後その詩のメモを書いたのち、まる1日を費やして読破した。クレイジー。

*著者の自伝的青春小説、と紹介されがちだが「訳者あとがき」にはかつて著者が「私がいままで書いた唯一のコメディ」と発言したことが記されている。私には後者には思えない。喜劇というには悲惨で内面的すぎる。

*親や親類を失い金も尽き精神も揺らぎ始める第一部、盲目の怪老人に朗読の仕事をする第二部、老人の息子(巨デブの男)と共に果てへ向かう第三部から成る。イメージや人物名が微妙に符牒していく、詩的な美しさと精神の弱さに満ちた物語。

*表紙デザインは最悪。この本を最後まで読んだのなら「表紙は満月でなければならない」ことは明白だろうに。銀色を使用していることで奮発したつもりかもしれないが、あまりに安っぽい。酷い。

   ◆

『幽霊たち』
原題:GHOSTS
訳者:柴田元幸
出版:新潮社
レーベル:新潮文庫

*地元のBOOKOFFで買った。

*ホワイトという人物からブラックという男の監視を依頼された探偵ブルーの物語。悪くはないが良くもない。マンガやドラマに慣れた日本の読者には見え透いたストーリー。一種の状況物語だが、サービス精神や遊びは無い。寓意というわけでもない。淡々としている。それでも読まされてしまうのがこの人のすごいところ。

   ◆

『現代日本詩集』
編者:浅野晃
発行:新学社
レーベル:新学社文庫22

*地元のBOOKOFFで買った。

*昭和43年(1968)発行、昭和54年(1979)重版。カバーデザインは棟方志功、監修に武者小路実篤、堀口大学が序詩『若い君に』を寄せているという常識を絶した本。カバーには「学校納入定価350円」ともある。どこかの書店の倉庫からBOOKOFFに流れたのだろうか。特殊な生い立ちの本であることは間違いない。

*『現代詩作マニュアル』がそうであったように詩のアンソロジーの多くは戦後詩・自由詩を中心として編成されている事が多いが、この本は戦後詩以降をばっさり切り落とし、新体詩以降を中心にしている。解説「近代詩の流れ」でも同様で、戦後詩やシュールレアリズムには一切触れていない。1960年代ともなれば谷川俊太郎ぐらい名前が挙がっても良さそうな気がするが……この謎は、アンソロジーを一読すると判明する。この本では『蛍の光』が4番まで載っていたり、山村暮鳥『日本』が入っていたり、もっと明確に森鴎外の『乃木将軍』まで載っている。戦中の一体感や犠牲精神を美徳と支持する立場にあるらしく、戦後詩の戦時下を悔恨する立場とは真っ向から衝突している。また「現代詩」として戦後の詩のみを扱うのではなく、新体詩からを「近代詩」として拾ってもいる。終戦を区分とせず明治から現在までを全て「地続き」として考えているらしい。これは面白い。あまり無い。

*念のために言っておくが、ちゃんと普通によい詩がたくさん載っている。掲載は内容ごとに「春」「夏」「秋」「冬」「山と河」「海」「鳥・獣・虫・魚」「犬・猫・馬・牛」「朝・昼・夕・夜」「雲・雨・風・雪」「歓びと悲しみ」「友と愛と勇気」「歌と踊り」「責務と献身」「勉強・努力・希望」「真理」「祈り」といった章に分けられている。とても読みやすいし、流れに無理がない。各作が余韻を高めあっている。いい編集だ。

*収録作は、堀口大学・山村暮鳥・土井晩翠・島崎藤村・蒲原有明・釈迢空・与謝野鉄幹から、高橋新吉・中原中也・立原道造・萩原朔太郎・宮沢賢治・高村光太郎といったスターから、山之口獏・西脇順三郎・内村鑑三・三好達治・小熊秀雄・金子光晴といった怖そうな人まで。……八木重吉は詩集で読むと食あたりするが、この詩では短詩がよい緩衝材として挟まっていた。北川冬彦の『ラッシュ・アワー』という詩には悶絶した。化け物みたいな詩を書く人だな。……「水爆相手の戦争に/もう一度おまへたちの手が必要なのだ/帰つて来い 帰つて来い」という田中克己の『戦友に』もすごいが、丸山薫の『原子香水』は超絶的。国連で読める一発。なぜ今まで読んだどのアンソロジーにも載っていなかったんだ。信じられん──

原子香水   丸山薫

わずか幾筒かの爆薬で
地表の半分を吹きとばすより
たった数滴の香水が
世界の窓を 野を 海を
われらの思想と
言葉の自由を匂わしてほしい

ああ 誰かそんな香水を
発明しないものか

貴重なその一壜をめぐって
国際管理委員会を設けよ
人類のもっとも光栄にかがやく昧爽
それら噴霧を
棚引く淡紅のハンカチに浸ませ!
すみれ色の空からふらせ!


*原子香水=「げんしこうすい」とルビ。
*昧爽=「あさ」とルビ。一般的な読みは「まいそう」
*淡紅=「ばら」とルビ。
*浸ませ=しませ。「浸」に「し」とルビ。


──「なんかもうネットもリーディングも嫌になってしまった。もう詩なんか書かない。俺の詩なんてガキの遊びだ」と叫びたくなってしまった。ここまで打ちのめされると気持ちが良いわ。

*定型詩も戦時下の詩もいまの読者には辛いかもしれない。全体的にヒロイックな風味を帯びたセレクションがされていたこともあり、私は時に興味深く時に楽しんで満足して読めたが。

*歴史見解の立場から来る物的貴重さはさておいても、良い内容と編集のアンソロジーだった。いやあ良いものを手に入れた。

   ◆

『世界の中心で、愛をさけぶ』
原作:片山恭一
作画:一井かずみ
出版:小学館
レーベル:プチフラワーコミックススペシャル

*同じくBOOKOFFで買った本。同名小説のマンガ化。絵柄は(ハイティーン向けの)今どきの少女マンガっぽい。

*30分とかからずに読めた。なるほど、と思った。ベストセラーになったこと映画化・ドラマ化されたことを不思議にも思うし納得もできる。これは『冬のソナタ』と同じで、ある特殊な土壌(波長)で絶賛されるタイプの物語。登場人物があまりにいい子たちだから全肯定で応援してしまう。ひとことで言えば「現実には無い甘美な、でももしかしたら車で30分ぐらいの場所にはあるかもしれない世界」。性善説の世界というか……夢のような、天国のような。人は死ぬし苛立ちもすれ違いもあるけど、この物語の世界は甘くイノセントで美しい。いわゆる少女マンガとも違う。こなみ詔子とか谷川史子とかに近い世界。

*ひとつ。私は映画もドラマも原作も知らないけれど、これはメディア化するならアニメかラジオドラマにしないと駄目だ。実写では嘘臭いメロドラマに落ちてしまう。こんなにも現実には無い世界、現実にはいない善い子たちを、リアリティを持って演じられる役者なんていない。コメディタッチにするわけにもいかないだろうし。

*実生活に耐えながら「もっと理想の世界や関係があるはず」と遠い夢を見ている人の心を満たし揺さぶるだろう。逆に、実現実を「現状が現実だ」と厳しく認識し今を生きている人には怒りを買うだろう。白倉由美が好きだった私には結構ヒットした。マンガだったせいもあるだろうけれど。

*余談。amazonのレビューなどを読んで知ったが、このマンガ版は小説の細部を相当削っているらしい。マンガとしてはこれで普通だと思うんだが、絵柄の先入観などから薄っぺらさを感じた人も多かったみたい。なるほど。原作も読んでみようかな。

   ◆

 以上です。長っが! 簡潔にしようとしても結局こうなるんだ分かってはいたんだ……。

 図書館へ行ったのは大阪へ行く直前だったから、ここに挙げた本はここ2週間ぐらいのぶんです。この他にも『ビッグイシュー』とか読みましたけれど。
 ……。
 本って、なんなんでしょうね。読んでいる間、読み終わってしばらくの間は自分が賢い人間に生き返ったような気がします、でもそんな変身は長くは続かない。ヒマつぶしでもない。何かを見つけようとして読んでいる。しかし残らない。
 自分が多くのメディア(作品や物語)を「消費して生きてきた世代」であるという事と、詩作者として「あらゆるものに価値を探し大事にしてしまう性分」だという事とが、矛盾しつつ効果しているのかもしれません。飽きっぽくて貧乏性。私に限った話ではないのかもしれませんけれど。

 最後の一冊、みたいなものを探しているのかもしれませんね。『この後にはもうどんなものも読み書きする気にならない』というような。
posted by 若原光彦 at 21:53 | Comment(4) | TrackBack(0) | 書籍
この記事へのコメント
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時計スーパーコピー検査方法は次の通りです:まず左手の人差し指で回したのが並べるのを固定に順番に当たって円盤合わせて角の位置の上でつきを打っていることができます。
Posted by 時計スーパーコピー at 2013年11月18日 15:10
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Posted by エルメススーパーコピー at 2013年11月27日 17:00
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Posted by スーパーコピー at 2014年06月30日 12:51
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Posted by モンクレール at 2014年11月22日 21:59
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