2005年03月10日

書籍『少女マンガ家ぐらし』

 タイトルがいいですよね。「少女」に「マンガ」で「家」で「ぐらし」ですよ。しかも「ぐらし」はひらがなです。ほのぼのします。
 中身の文調もほのぼのしています。徹夜の話、スランプの話、担当さんにボツをくらう話なんかもあるんですが、ハードな調子ではありません。楽しく読みました。

   *

 著者の思い出やエピソードを書いた個人的エッセイではなく、あくまでガイドブックとしてマンガ家の生活の一般的なところだけが平素な文章で書かれています。著者が、どうやってプロになったのか、どんな風に作品を作っているのか、スケジュールやアイデアはどうしているのか、など、著者の実感から普遍的なことを紹介しているだけです。
 ネタの膨らませ方についてとかもあるけど「好きなものや素敵だと思うことが描きたい動機になる」とか「起承転結に当てはめて話を面白くする」という程度のアドバイスです。
 コマ割りについてのような、技術的な話もそこそこなので「すぐ役立つことを教えてくれ!」「具体的に何をどうすればいいんだ!」というような人には向いてないかな。業界のゴシップに興味があるような人にも物足りないと思います。マンガ家になりたい人より、他ジャンルの創作をしている人が読んだ方が面白いでしょうね。文章をなぞりつつ『この人はそうやって膨らませてるんだあ。わかるわかる』と思うところが幾つもありました。

   *

 この方、とても文章が上手です。玄妙な言い回しができるということではなくて。説明が簡潔で、決め付けてもいなくて、話題がスムーズで、「〜だった」「〜である」口調なのに腰が低くて。マンガ家さんって、やっぱり構成や雰囲気作り、情報量の加減なんかにセンスがあるんだなあって思いました。

 カットが数ページごとに入っていることもあり、読みやすく楽しい本でした。私もマンガが書きたくなってしまいました。いかんなあ。

 余談ですが、マンガの「具体的なテクニック」が知りたい方は「美術出版社」刊、「菅野博士+唐沢よしこ」著の『快描教室』という本がおすすめです(と紹介する必要がないくらい有名な本ですけど)。……私もなぜか持っています。なぜだ。謎です。

   ◆

書名:少女マンガ家ぐらし
著者:北原菜里子(きたはらなりこ)
発行:株式会社岩波書店
レーベル:岩波ジュニア文庫224
1993年6月21日 第1刷発行
ISBN4-00-500224-2 C0295(本体583円)
posted by 若原光彦 at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1142372
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック