昨日9日(水)は、名古屋八事でオープンマイク『詩のあるからだ』がありました。早めに家を出て、会場のPOPCORNさんで本でも読んでいよう……と思っていたのですが。
*
JRから降り、金山駅から出たところで『そうだ。路上パフォーマーを少し見ていこうかな』と南口へ向かいました。
南口にいたのは、ミスチルをギター1本で歌ってる男性、オリジナル曲(だと思う)をギター弾きながら歌っている男性(『The Babies』さん)、詩の書のポストカードを売っている男性。
私はまず詩の所に近づきました。いちばん手前で近かったから。
近づいて見てみると、立て看板には「なんで屋」と書かれていました。売られているポストカードは、詩の書によくある励ましっぽい言葉が3分の2、「いい男って何だ?」とか「理由なき殺人が増えたのは何で?」などと疑問系でキツい質問が書かれたものが3分の1。前者はともかくとして、後者は一体なんだろう。私はこういう言葉は好きだけど、それでも買おうとは思わない。
それと、何か印刷がきれい過ぎるような……。犬の絵もやけに上手いし……。お店番の男性(大学生ぐらいのお兄さん)が書いたものじゃないんじゃないか?
お店番の男性は、ホワイトボードを取り出して、お客の女性の話を聞き人生相談のようなことを始めました。男性の横には高校の制服を着た女性が一人、私服で大学生ぐらいの女性が二人。これはどういう……大学のサークルか何かかな。
と、あれこれ考えながら見ていると。私が来る以前から居た、男性のお客さんが話しかけてきました。お話を聞くに、この方も関係者だったようで。何をしてるのか、どういう会なのか説明されました。
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これは『なんで屋』というもので「疑問や悩みをお客さんと一緒に考え原因や解決策をつきとめる」露店だそうです。関東・関西で続いていたものが、最近名古屋でも始められたのだそうです。
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『なるほど、ようするに街頭カウンセリングといったところかな』と私は思いましたが、話を聞くにどうやらそれだけではないらしい。
関係者の男性とした話をこまぎれに思い出してみます。「」が男性、『』が若原です。うろ覚えなので順序や言葉遣いは実際と多少違いますが、だいたいこんな内容でした──
「人の話を聞くのは楽しい。人間は他人の話に耳を傾けるように出来ている」
「人間は一人では生きていけない」
「何でオスメスがいるの? とか考えていくと、どんなことにも理由はある。人間の原点をたどって事実から問題を考えていくと解決策が見えてくる」
「いろんな疑問を子供のように素直に考えてみたい」
「考える動物は人間だけだし」
『なんだか哲学みたいですね』
「ちょっと違うけど。宗教でもないし」
「考えることから社会を変えていきたいという集まりです」
「ある苦しい立場に居る人がいたとして、その状況は全てその人のせいではない。育った環境にも原因はあって」
『そうですね』
「もし自分と同じ環境で育てば誰でも似たような人になるでしょう」
『それはそうです、それは私もそう思います』
「1970年までは誰もが自分第一だった。今はみんな中産階級化して、食べ物だって捨てるほどある。暮らしに困ることはまずない。社会に余裕がある、だから若い人は目標を見失いがちだし、古い人(政治家とか)は自分第一の意識のまま椅子取りゲームをし続けてる」
「目の前でひとが飢えているのに一人だけ腹いっぱい食べることはできない。人間はそういう風に出来ている。そういう状況では辛さを感じるように出来ている」
「みんなの声に耳を傾けてそれを集めていけばこの先の解決策も出していけると思っている。政治や企業からではなく、みんなで集まって社会の不全をなおしたい」
『解決策が導き出せても、それは新たな事実を突きつけられて悩みが増えるということになりませんか』
「いや、策が見つかれば気持ちはすっきりするでしょう」
『お話を聞いてると、どうにもならない自分に振り回されている「弱者」・運命に翻弄されるタイプの人間の思考というより、どこかの会社の社長とか政治家とかのような、何でも割り切ってしまえて頭がよくて才能があって使命を信じていて、という「強い人間」の論理に思えるんですけれど』
『私は弱者の側にシンクロしがちだし、運命や不毛や無意味や犠牲というのも自然なことだと思ってる。あなたはポジティブで強くて人間や善意を信じていて立派だけれどそれは誰にでも出来ることじゃない』
「でもそうやって「しかたない」「わからない」「運命」で切ってしまったら何も解決しない。そういう大人が多い」
『確かにそれはそうですが』
「運命とか宗教とか神とかだってちゃんと理由があって出てきた。みんなで考えたい」
「肯定というのがこの活動の基本姿勢になってる」
『肯定というのは「大人はわかってくれない」と言うセリフが示すように、肯定する=わかる=理解するということですから。それはみんな求めてるかもしれませんね』
「「理由なき殺人」なんて言うけど、本当はそれにも理由はあるんだよね。大人はわかってないだけで、同級生の子は「あいつならやると思った」とか気づいてたりする」
『いや、本当に理由なんて無かったかもしれませんよ』
──といった話をしました。
どうもただの「お悩み相談」や「聞き屋」ではないようです。宗教でもないらしい。啓発セミナーっぽいような気もしないでもないけれど……私はビジネススクールっぽいなと思いました。「どこかのビジネススクールでブレーンストーミングを学んで、それを市民活動に応用している」みたいな。
男性はポジティブで、私が多少失礼なことを言っても常に落ち着いた表情をしていました。30分以上あれこれ話したかな。互いのチラシを交換し、私は金山駅から地下鉄に乗って八事へ向かいました。
*
で、今日。ネットで調べました。
類グループ
るいネット
Mainichi INTERACTIVE:サンデー毎日:特集:人気露天商「なんで屋」ブームはなんでや?
『類グループ』というのがこの活動の本体組織らしいです。あの男性の言っていたことと同じことがサイトには書かれていました。この組織の思考法に沿って『るいネット』という会員制のサイトも運営しているようです。
私はどうしても『みんなの意見の一致を目指すのは危険じゃないか?』『本当に全てが人間に理解できるのか?』『得た答が間違っていたら?』『人間古来の性質なんてものが本当に存在するのか? 存在したとして、現代や各自にそれを当てはめて成功するのか?』『言葉にならない衝動や運命といったものまで論理上に認識してしまっていいのか?』など、疑問が消えませんでした。
私が詩を書く人間だから……答の複数ある問題や、言葉で割り切れない妙味を相手にしている人間だからそう思ってしまったのでしょう。世の中には「答を出し道を見つけ、そこを突っ走る」べき場合と「答を出さず、感受をそのまま受け入れる」べき場合とがあります。政治や経済などの実作業には前者が求められます。個人の快楽や体験は前者でも後者でもあります。前者のように分析していくと削り落とされるもの・誤解されるもの・こぼれ落ちるものを、後者のようにただ実感をしていくのもひとつの効率的な生き方です。
自分は論理的な人間だと思っていたのですけれど。意外と個人的で非論理的な人間だったんだなあ、と気付かされました。まあ詩なんてだいたいが非論理的なものなんだから、今まで気づかないほうがおかしいのだけれど。
というこの文章がやたら論理的なのも私らしいといえば私らしいです。
*
まあ『なんで屋』さんを訪れ、そこでの会話や思考を楽しむ場合はそんな深く考えなくていいと思います。言葉にしたい、考えてみたい問題があって、その相手をしてくれる人がいたらきっと楽しいだろうと思いますし。
そういえば自分、男性と話していて「なにか普段、疑問に思っていることはありますか」と聞かれ、とっさに『詩って何ですか?』と言いかけました。『あわわ、いきなり何だ俺は。そんなことを言って困らせてはいけない』と思い、けっきょく何も言わずに話は進んだんですけれど。言ってみてもよかったかな。詩のポストカードも売ってたわけだし。ちょっと面白かったかもしれませんね。
2005年03月11日
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Excerpt: 今日はあいにくの雨模様ですね私たちのブログのタイトルでもあるなんで屋さんは路上で活動しています。(雨の日はなかなか大変みたい。今もどこかでなんで屋さんがんばっているんだろうな〜今日はなんで屋情報をご紹..
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Tracked: 2005-10-04 19:02
なんで屋やっているのはなんで??
Excerpt: 先日の火曜日ブログを更新した後、早速アサダッチ露店にいってきました!あいにくの雨模様でしたが…阪急豊中駅前につくとお手伝いさんが笑顔で出迎えてくれました☆(4ヶ月前にもあったことのあるお手伝いさん久し..
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Tracked: 2005-10-07 18:50
僕は先週、東京・北千住で「なんで屋。」さんに遭遇して少し話をしてみました。地球温暖化を切り口にして話ました。カンパを求められましたが、僕よりも情報量が少なかったのでカンパはしませんでした。
その中で相手の方からひっかかる発言がありました。それは、
「お金や地位がこの世の中を決めているなら、それをとっぱらってしまおうよ、と(我々は)考えているです。」
これは社会主義の思想だと感じ、この団体を危険視しました。
そもそも全ての疑問に答えがあると考えてることが異常だと思います。またその疑問に対して答えを出せると考えていることは思い上がりであると感じました。