2006年02月01日

1月下旬どっこいさ

 1月中旬〜下旬は、猛烈な勢いで散文を書き、また猛烈な勢いで作詞をしていました。掘って掘ってひたすら掘る、ちょっと戻る、また掘る、というような。ぐるぐると同じ行為の繰り返しで、細部に延々とかかずらって、休止して冷静になって、エイヤッとまた燃えて……脳みそ混乱ぎみでした。
 作詞は、サウンドクリエイターhitoshiさんのイベント『MIX Senses Vol:2』への参加作品です。大変でした。何バージョンも、1行しか違わないような遅々とした推敲を重ねて完成させました。作詞って本当に難しい……この詳しい話はまたのちのち書くつもりです(いまイベントは「歌い手さんが、歌詞参加作品の中から、自分の良いと思った歌詞を選ぶ」段階なので、あれこれ書いて影響与えてしまうとしまうとよくないかなと思って。そうでもないのかな。とりあえず、のちのちにします)。

   *

 1月28日(土)『言葉ズーカVol.その3』があり、名古屋へ行きました。私は出演者であり、スタッフ補助の役割でもありました。
 上記リンクを覗いてもらうと出演者が載っていますが、この通り、ある種のひっちゃかめっちゃか感、収拾のつかなさが良し悪しで満ち満ちていました。『Vol.その2』では会場が静まり返り空気が張り詰めるシーンもあったのですが、今回はそういう方向に場が向かわなかった。
 オープンマイクはともかく、本編のプログラムは「パフォーマンス指向の人」と「ポエトリー・リーディングの人」とが交互になっていたので(これも良し悪しですが)めまぐるしい、予測のつかない、意図の読めない世界だったかもしれません。受け取り手によって評価が変わる可能性が高い状況。
 総合的にはパフォーマンスの印象が強烈で、パフォーマンス指向の強い非日常の世界になったかな。一般のお客さんにはちょっと辛い状況だったかもしれません。いや、一般とかどうとかは関係ないかな。単に人それぞれ、好みが分かれる状況だったかもしれません。会場『涅槃』の雰囲気にはとても合っていましたし『涅槃』じゃなきゃ形にならない一発でしたけれど。

 私は出演数分前まで、何を読むか、ぎりぎりまで悩みました。一般的な……笑える芝居じみたものをやって、お客さんを舞台に引き戻す「つかみ」になるべきなのかもしれない。でも浮き足立ったことをして、それがそのまま受け入れられるような状況でもない。場がおかしなダレかたをしている。ならばお客さんと張り合うタイプでバサッと緊迫感を出す方が正しいが、それは聞く方は辛いだろう……。
 結局は、2〜3年前の自由詩っぽい朗読作『オーヴァーヘッド』『ステイク』『ホーム&アウェイ』をやりました。頭と最後に即興でトークを交えて。トークも詩も、滑るか滑らないかそのギリギリのところだったと思う。でも通った。力技で押し通したんじゃないくて、ただスタスタと通り抜けた。状況的にまずいが、まずくない。押さなくても媚びなくても通れば通る。何か「憑いて」いた。
 妙な感覚でした。奈良ではアウェーを「押し通った」感じがありましたが、今回は……お客さんや場に合わせたといえば合わせたし、合わせなかったといえば合わせなかったし……。決まってたといえばそうなんだろうけど、足りなかったといえばそうでもあったかもしれない。「何とかなった」というのとも違って。「済んだ」という感じに近い。自分の出演部分は、妙な実感で終わりました。

 私のステージや状況の賛否はともかく、ひとつだけはっきりした問題としては……私語厳禁。『涅槃』さんは、ステージの裏がバーカウンターになってまして。そこにいてステージを見ずに飲んでてもOKなんですが、そちら側からの声はステージを抜けて客席に通ってしまう。ステージと無関係な笑い声とか轟いてしまう。集中力が全く作用しない。求心力が生まれない。
 次回3月11日(土)『Vol.その4』は私が司会になることが決まっています。……仕切るぞ。次は邪魔だったら出演者だろうとつまみ出すぞ。……というくらいの勢い気合いで司会せにゃな。うむ。……次回は『Vol.その2』に近い、しっとりした感じになりそうな予感もしてるんですけどね、甘い予測は通用せぬ。

 mixiのある場所に、今回の『言葉ズーカ』を見に来てくださった方からの詳しいレポートが載っていました。読んだのですが、本当に嬉しかった。率直とか正直とかそんなんじゃなく、まともに、まともなことが書かれていました。良し悪し両面が含まれていて、その人の実感に満ちていて。「嬉しい」なんて単純に思っちゃいけないのかもしれないけれど、とてもありがたいと感じています。

   *

『言葉ズーカ』の閉幕後は『涅槃』で飲みながら1時ぐらいまで人と話してました。話の内容はここには書けませぬ。まあ、あれだ、吉田戦車についてとか桂正和についてとか。革靴のかかとをつぶして履く若者が増えているらしい、とか。はい。
 その後はISAMUさんに教えてもらったネットカフェに行って、てっちゃんと夜明かししました。ブースが残ってないとのことで、2人で仲良くペアシート。……。ペアシート。ソファーが広い。
 てっちゃんが寝てる間、私はスティーヴン・キングの『小説作法』を読破しました。これは良い本です。創作の核心を突きに突きに突きまくっている。小説執筆についての本ですが、創作全般に教示とエネルギーを与えられる。スティーヴン・キングという名前からさまざまな先入観を持たれそうですが、文字が生き生きと躍る、それでいてとことん実践的な、豊かな本でした(このとき読んだ本は図書館で借りたものでしたが、後日本屋に注文しました。届いたらあらためて紹介を書こうかな)。

   *

 ネットカフェで夜は開け、ブースのテレビで『所さんの目がテン!』『遠くへ行きたい』を見て……1月29日(日)朝9時半。ネットカフェを退店しました。
 2人地下鉄駅への入口で『どうしたもんかなぁ』と立ち尽くしていたのですが、『まあ熱田には図書館も古本屋もあるから時間はつぶせるだろう』と、とりあえず『続・ぽえ茶』の行われる熱田に移動。てっちゃんとはそこでいったん別れました。
 で、私は……『短歌ヴァーサス』を読んでたかな。私は短歌を一気に読むと、短詩が良く浮かんできます。心がネタ探しモードに入るんでしょうね。図書館の外の灰皿で煙草を吸いながら思いついた短詩をいくつも書きとめてました。書きとめる矢先からまた次のネタが浮かんだりして。10個ぐらいメモしたかな。雲ひとつなくよく晴れた、暖かい、豊かな日でした。ぼーっとしててもいいし、セカセカ本を読んでてもいい。うん。

 あと、熱田の古本屋では、ボブ・グリーンの『十七歳 1964春』と、なだいなだの『れとると』を見つけて狂喜乱舞しました。♪探しものは何ですか〜♪古本屋ワゴンセールで50円ですか〜♪そんなことってあっていいんですか〜♪
 このとき買った『れとると』はもうすぐ読み終わるところです。この日、図書館でも帰りの電車でも熱中して読み進みまして。やっぱり肌に合うんですよね、なだいなだ。
 いろんな本を読みますけれど、やはり肌に合うものを読んでいる時がいちばん楽しいです。読むスピードも速まるし、内容も無理なく伝わってくるし。読書が心地よい。

   *

 15時からのオープンマイク『続・ぽえ茶』は賑やかでした。ひさびさに仲仲治さんにもお会いして。絵本を朗読したり、歌を歌う人もいたり。はらだよしひろさんは即興に挑戦したり。
 すっかり『続・ぽえ茶』恒例となった宿題(3つの言葉を盛り込んだ作品を作ってきて読む)ですが、今回みんな面白かったです。この日のお題は「みかん」「五十八年ぶり」「凍結」の3つ。堀場さんは「凍結みかん食べくらべ大会」の模様というおかしな話。コウさんは日中関係についての自分の考えも含めた真面目な詩。水尾さんは「大家のおばあさんを預かった」という冗談まじりの物語。それぞれお題を絡めながら、深かったり馬鹿馬鹿しかったり。『みんな、やるなっ』って感じでした。あの場限りの面白さだったかもしれないけど、面白かったことにかわりはないです。

 恒例、うどん屋さん『めん串』での二次会のあと、何人かは新年会のカラオケに向かい、私と林本さんは星が丘へ向かいました。星が丘の『スロー・ブルース』というジャズバー(なのかな。たぶん)に夏撃波さんが出演されまして。お邪魔しました。アットホームな雰囲気で、居心地が良かったです。
 天井が低くてね、集中力が働きやすいというか、演者が映えやすい空間でもありました。お客さんとステージの距離も近くて。それがぬるさでもあり、暖かさでもありました。心地よかった。

   *

 22時半ごろ『スロー・ブルース』を出て、地下鉄とJRで家に帰りました。さすがにここまでくると眠気も吹っ飛んでいたのですが、ちゃんと寝ました。読書熱がムラムラッとまた起こっていたしファミレスで夜明かしでも……とも思ったんですけれど。そこまでつとめて不養生せんでもねえ。そこはおとなしく寝ました。
 そして翌日(30日)・翌々日(31日)。『MIX Senses Vol:2』の参加歌詞作品公開。mixiでの『言葉ズーカ』レポート拝読。某氏から『ええっ! そんなことが名古屋で?!』という電話。奇跡の入手・なだいなだ初期の作品『れとると』読書進行中。

 嬉しいことと恐縮することと頭かかえることと面白いことと、いろんなことがドバッと一度に降りかかってきた1月末でした。疲れたというより……エネルギーを取り戻したような感じがしています。こう、わわわわーっとルツボに飲まれて、自分の思考がサバイバルに研ぎ澄まされたような。非日常をくぐり抜けてきて、生活の体感速度が加速したような。
 ああ、単純に「気力が沸いてきた」って言えばいいのか。あはは……。そんな感じです。

 昨年12月は『新年になったら楽になるだろう』と思っていましたが、実際に1月になってもさほどのんびりとはならなかった。1月中旬には『2月になったら楽になるだろう』と思ってたんですが、どうやらそれもなさそうです。まあ、このままドタバタと梅雨ぐらいまで過ぎていくのかな。なんだかんだと。
posted by 若原光彦 at 01:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 近況
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